素敵なラブリーボーイ
仕事を抜け出して
自動販売機に水を買いに走ったら
3台ある販売機の端っこのやつに、小学生の男の子が張り付いていた
「いいな〜120円あったら買えるのにな〜」
そうぼやきながら、
販売機に全身をぴったり寄せて、伸ばす限りに右手を伸ばして、いちばん上の列のコーヒーのボタンを虚しくカチャカチャ押している
第一感想
世の中そんなに甘くないんだよ。そこでボヤいてても、誰もキミにコーヒー買ってなんてくれないよ…
そんな大人なことを頭のカタスミによぎらせつつ、別の販売機で自分の目的のボトルのボタンを押したら、なぜ…?
ボトルは逆立ちして落ちて来て、出口でつかえて取り出せない
なんとか引っ張り出そうと奮闘することしばし、ダメだ!手が入らない…そうだ!こいつの出番だ!とヒラメいた
「キミさ、ここ来てこのボトル取ってくれない?そうしたらジュース1本おごるよ」
彼はしがみついていた販売機から駆け付けてきてくれた
小学生の小さくやわらかな手でも、なかなか出口奥で逆立ちしたボトルには届かない
「お、おれの手がでなくなる〜」と苦戦しつつ、でも彼は、ちょっとへこんだボトルを無事取り出してくれた。
「ありがと〜助かったよ。ジュース、どれがいい?」
彼が張り付いていた販売機の前に行ってたずねると、なんだかどぎまぎしてしまっている
「お礼だからさ。好きなの選んで」
お金だけは入れて、好きなボタンを押してもらった。
やっぱり、さっきまでずっと押していた甘いコーヒーのボタンだった。
コーヒーの缶を握り締めた彼は、なんだかキラキラして見えた。
とても頼りがいのある、素敵な少年。
ふにゃふにゃで販売機にしがみついていても、いざ、この時には!と、ものおじせず立ち向かってくれたキミ。
こうでなきゃね
いや、こうありたいね
「応える」ということの質をキミは生きてみせて教えてくれた…
第二感想
それで、やっぱり私は彼の術中に嵌まったのか?
それとも…