子犬が見る夢


ペットショップの前を通りかかったら
子犬が一生懸命眠っていた

違う種類の仲間と
体をよせあって

それは
寝ているというより

大切なことをわすれないように
大きくなってもわすれないように
懸命に思い出して
記憶に焼き付けようとしているようだった


生まれてすぐに引き離されてしまったであろう母犬のやわらかなぬくもりなのか

この世界に犬として生まれてゆく目的なのか

命を託してくれた
カミサマとの約束なのか


ただ愛するということ
ただ愛されるということ


無邪気で無垢なままに
何も恐れずに
心を開いても痛くないのだと
人間に思い出させてくれるために
彼らは
もっとも過酷な戦場へ旅立つ


愛に条件がつき
無邪気さが修正される場所へ


だから
どんな場所でも
ひとり
本当に大切なたったひとつのことを
忘れないために


彼らは
懸命に眠る


人間
しっかりしなくちゃね


君らがいなくても
やっていけるように