世界一高い場所

生物として人間を考え直さなければならないと思う・・と
そういう言葉を聞いた


人間としての人間ではなく
生物としての人間


生物としての人類


人類が知るところの世界最高峰
世界でもっとも高い場所
エベレストからの視界を撮影するという
エベレスト世界最高峰を撮るを見ながら


生物としての人間という言葉を
もう一度思い出した


8000m級の稜線へ向かう
雪と氷の世界では
1歩1歩喘ぎ喘ぎ息をしながら
不恰好に進む人間など


真っ白な砂糖の上を動く
アリンコに過ぎない


映像を見ていて
一体、この画面のどこに
人間がいるのだと目をこらすと


ゴマ粒のようにささやかな点が
遅々として移動している姿が
ようやく目に入る


人類の小ささに
胸が詰まり
息を呑むような思いがする


神が世界を見たら


アリと人類の間に
いささかの区別もないと思われる


もしも異なるものがあるとするならば
人類は
する必要のないことを
誰にも頼まれずに行っているということ


それはすなわち
天を目指すということ


世界一の場所からの眺めなど
見なくても
生活に困ることなく
出世にも
学歴にも
人生に何の影響もなく
生きていけることは
明らかだ


なのに
世界で一番高い場所からの眺めを
撮影したいとたくらんだ人間がいて


死ぬほど苦しい思いを超えて
天空の頂に立ち
そこからの眺めを
360度ぐるりと
見せてくれる


その気の遠くなるような
冷たい稜線と
はるかな地平線の映像を見たとき


これが人間が
一番人間らしいことを為しているということなのだなと思った


こんな風に生きること
自分が最も人間らしいことを為していることを恐れなければ
地球は
平和になるのだろうに・・・


人が本当に人らしいとき
生物としての自分を生きるとき


原発作って金を儲けようとは
思わない気がする







http://www.nhk-g.co.jp/program/documentary/great_sumits/index.html