・・まだ名前が無かった頃のこと・・

見えるもの
聞こえるもの
触れるもの
におうもの


知覚のすべては
記憶と結びついて
現実世界に物語を作り出す


もしかすると
それは
自分が生きているという錯覚
生きているという認識


生きていたいという
なにものかの欲望




いつもより重かった
夏という時間の疲れに
不意に響いてきた
音の記憶


それを聴くと
なんだか
まだ自分に名前が無かったころの
遠い記憶に触れることができるような気がする


名前がない
だから
言葉がない


だから
そこに感じたものの記憶は
波長になって届いてくる


すでに知られているものに
疲れ果てたとき


未だ知られざるものの
静かな音が
頑なになった現実世界の境界を
ゆっくり溶かし去ってくれる


龍馬伝に使われた『想望』


この曲のタイトルも
未だ知られざる言葉